名取市西部に小高くも奥深く構える「高舘山(標高204メートル)」の頂上、の「山一ノ杉(通称・山一さん)」が息づく「熊野那智神社」を訪ねた。眼下には遠く太平洋の大海原が広がり、名取市街地が一望できる里山の山頂。一歩足を踏み入れた瞬間から一気に視界が広がり、清々しいの一言に尽きる。
神社の起源は養老元年(717年)。世は奈良時代、同社史料によれば、ここ陸奥の名取郡廣ノ浦(現在の閖上)に住む漁師が海底に光る御神体を引き上げ、御神体が放つ光の先の高舘山に社殿を建立するに至るという、遥か昔に思いを馳せる由緒ある神社だ。
高舘山に鎮座する「名取熊野三社」の一つとして親しまれ千三百年。紀州熊野三山から分霊され、方角、位置関係も同様に配置された「写し霊場」という貴重な地域で、人々は高舘山の魅力を後世につなぐ。「熊野那智神社がひだまりのような場所であってほしい」と語るのは、5年前から宮司を務める井上幸太郎さん。しばしそのトークに引き込まれ、笑顔で話す気さくな横顔に地域からの人望も伝わる。
境内には参拝客や地域の方々の姿も多く、自然に寄り添った飾らない里山での時間に心も洗われる。令和五年には紀州熊野への信仰が厚かった「名取老女」が三社をこの地に勧請して九百年の節目を迎える。猫たちにも寛容な穏やかな境内、感じるままに、じっくりゆっくりと散策してほしい。
熊野那智神社
【住所】名取市高舘吉田字館山8
【電話】 022-765-8217
【受付時間】9:00~17:00
【HP】熊野那智神社