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『つめトピア』 代表 小磯 麻有 さん

「福祉ネイル」という言葉、聞いたことありますか?

高齢者施設や障害者施設などに専門の資格を持った福祉ネイリストが出張し、会話をしながらネイルケアやハンドケアを行うというもので、年齢や性別に関係なくその気持ちのいい時間を過ごした人からは皆一様に笑顔がこぼれるのだそうです。最近ではこの福祉ネイルが美容的な目的だけではなく、健康寿命を延ばし、生活の質の向上や認知症ケアの効果も期待できるという研究もされ、注目されているようです。

名取市在住 小磯 麻有さん

名取市に住む小磯 麻有さんは長年ネイリストとして指先を美しく彩りたいという人を対象にネイルケアを行っていました。常に技術の向上を図り多くのコンテストなどにも出場し「美」を意識したネイリストとしてたくさんの爪を相手にしていたそうです。そんな麻有さんが、ある時福祉ネイルというものに出会い、きれいになった爪を見て喜ぶ高齢者の笑顔にやりがいを感じ、また爪の持つ身体的役割などを強く意識するようになり「美」から「健康」へと自分の技術を生かせる場を変えていったそうです。

何度か高齢者施設を訪れネイルケアをしていた時、対象者から「足の爪は切ってもらえないの?」と問いかけがあったそうです。ネイリストですからもちろん手も足もケアはできる麻有さんです。要望に応えようと靴下を脱いでもらうとそこにあったのは「普通じゃない爪」。何か月も切らずに放置していたであろう爪は長く伸び、厚くなり変形をおこしていました。

その後いろいろと調べてみると足の爪に異常を来たしている人は実はかなり多いということが判明。特に高齢者は視力や握力の低下などで爪切りを使えなくなったり、股関節の変形でかがむことができなくなり足の爪を切れなくなっていくのだそうです。そしてその長くなった爪を誰かに切ってもらうこともできず、そのまま何か月も何年も放置してしまっている人が結構多く、高齢者の爪切り難民は約700万人とも言われているそうです。だから多くの高齢者をお世話している介護士などの言葉を借りると、それら異常な爪は「当たり前にある爪」なのだそうです。

施設を訪問し爪に関しての悩みなどを確認

高齢者だけではありません。若くてもアスリートなどは足への負荷で爪が変形・変色していたり、私も時々やるのですが、足の指をベッドの角やドアに思いっきりぶつけて衝撃で爪が割れたりはがれたり。また長い時間、足に合わない靴を履くことで爪に異常をきたすこともあるそうです。よほどの時は病院に行って処置してもらうのでしょうが、自己判断で「そのうち治るさ」、「これくらいで病院には行けない」と放置してしまっている人も多いのだとか。

麻有さんはそういった爪に悩みを抱えている人を助けたいと考え、それまでのネイルケアに加え、更に必要な技術や知識を学び訪問型の爪ケアサービスを行う『つめトピア』を立ち上げました。

『つめトピア』は対象者が健康で元気な人とは限らないことから、病気を持つ人の爪をケアするという行為が見方によっては医療行為に当たるのではないか、という曖昧な部分を明確にするため経済産業省における「グレーゾーン解消制度」を利用し、2年半という月日をかけ、厚生労働省より爪のケアサービスが医師法に抵触しないという回答を得たそうです。

そして今年の11月11日より『つめトピア』が始動しました。

ネイルケア
「爪をきれいにしてもらって気持ちがいいねー」

医療と連携し、医療行為の範囲とケアの境界を明確にした上で、サービスを施す。具体的にはかかりつけなどの医療機関に爪ケア連携シートを記入してもらい、ケアサービス後、サービス内容を記録し必要に応じてその医療機関へ報告。もしかかりつけ医がない場合は『つめトピア』の活動に賛同し連携している岩切の「小山皮フ科クリニック」を紹介しているとのこと。

『つめトピア』は施設やご自宅を訪問し爪のケアサービスを施すだけではなく、看護師・介護士・ご家族など高齢者の爪切りをすることがあるけれど、専門的な知識や技術がないという方々へのレクチャーも行っているそうです。

まだ始まったばかりの『つめトピア』ですが、足の爪を切りケアをしたおかげで歩行困難であった人が明るい気持ちを取り戻し、お散歩へいけるようになったなどのうれしい声も聞こえてきそうです。

取材の日、麻有さんの自宅サロンにて40代女性の切り過ぎた爪のケアを見せてもらいました。思いっきり切られた爪の下からは皮膚が見え、見ているこちらが痛みを感じてしまいそう。

麻有さんはこのままにしておくと皮膚の盛り上がりや炎症、巻き爪など悪影響が及ぶという話から実際に今行っているケアの1つ1つ、爪周りの掃除や爪の切り方などを細かに説明し、時には日常会話を挟みながら楽しそうに手を動かしていました。

いろいろな道具を使いケアをしていく

終わってから麻有さんに、ケア中たくさんお話をしていたのは、もしかしたら取材用だったのかと思い尋ねてみると、そういうわけではなく、普段から対象者とはいろいろとお話をするのだとの答えが返ってきました。でも大半は気持ちよくて途中で寝てしまうのだとか。

福祉ネイルのその先を歩み始めた小磯麻有さん。宮城県内では初の取り組みとなる―予防的爪ケアサービス―(爪が引き金となり健康を害することがないように、適切な爪のケアをするサービス)を『つめトピア』のメンバー5人で施設などを訪問し行っている。

たくさんいる爪切り難民の現状と爪のケアをすることの大切さを知ってもらいたい。そして医療連携の幅を広め施設へ往診に来る先生とも繋がりを持って多くの爪切り難民を救いたいと話してくれた。さらに今後は、麻有さんのように変形し特殊となってしまった爪もケアできる看護師さん、介護士さん、ネイリストなどの育成もしていきたいと考えているようだった。

あなたの爪は大丈夫?

ご両親の爪は大丈夫?

普段あまり気にかけていない足の爪、これを機にゆっくり観察しお手入れしてみてはいかがでしょうか。
(取材:NAOKO)

つめトピア(株式会社マルナニエ)代表日本保健福祉ネイリスト協会 理事 小磯 麻有さん
【住所】名取市美田園2-1-2-904
【電話番号】022-778-3208
【Mail】marunanie@gmail.com
【HP】https://marunanie.com/

小山皮フ科クリニック (提携クリニック) 
【住所】仙台市宮城野区岩切1-26-20
【電話番号】:022-255-5968
【HP】小山皮フ科クリニック

サービス付き高齢者向け住宅 SOMPOケア そんぽの家S八乙女(取材協力)
【住所】仙台市泉区上谷刈3丁目11-21
【電話番号】:022-772-5211
【HP】そんぽの家S八乙女
サービス付き高齢者向け住宅。周りは閑静な住宅街で近くにはスーパーやドラッグストア、コンビニエンスストアなどがあり住環境が揃っている。ホームでは「自分らしい生活」を送れるようにサポートし、様々なイベントやサービスも提供。そのサービスの1つに「福祉ネイルサロン」があり麻有さんたちは定期的に訪問しサービスを施している。

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