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只野玲子(一社)笑い文字普及協会・初級講師

 最近笑顔になった瞬間ありますか?誰かに「ありがとう」と伝えたり、「ありがとう」と言われると、不思議と幸せな気分になるのが人間というもの。 表情は自然と笑顔になるものだ。
 そんな問いに直球を投げるのが、今回ご紹介する「笑い文字」。笑う文字って何?と、名取で活動する只野さんの元へ。物腰柔らかな女性、日々子どもたちと触れ合う保育士さんだった。
 生まれは新潟県。ご縁あって福島県浪江町のご主人と出会い、子育ての傍ら保育士の仕事に生きがいを持って過ごしていた玲子さん。国道6号線を挟んで東に太平洋、西に阿武隈高地が連なる日常の光景は東日本大震災で一変。二つの容赦ない現実に直面し、故郷新潟を経て、宮城の名取へと移り住んだ。

 浪江と名取の地形はどこか似ている。慣れ親しんだ海と山のある地形は、初めての地をも懐かしさに引き込んだ。名取での新たな生活に馴染もうと過ごす中、家族との旅先で出会った「笑い文字」。名前の漢字に寄り添う、その愛らしい笑顔の絵に癒され、書いてみたいと思ったのがきっかけだった。
 誰かの顔を思い浮かべながら書き、渡して伝わる「笑い文字」のメッセージ。「書いて半分、渡して完成」であり、「感謝と喜びの循環する世界を作る」のが普及協会のテーマという。書いている自分と向き合う時間、誰かに伝えたい感謝の心。筆文字コミュニケーションと玲子さんが説明してくれた通り、シンプルながらこの絵文字に秘められたパワーは計り知れない。

 「マスクのしたは笑顔です」その一言に、現在の歯がゆいコミュニケーション事情や日常の憂いを実感する。そんな中、玲子さんの優しさや良心は、感謝のメッセージとして日々誰かに届く。自身の代わりとなって「おかえり」とご主人を迎える一枚。毎日配達してくれる業者さんやエッセンシャルワーカーの皆さんへの一枚。保育園で泣いている子どもを笑顔にする一枚……。ふと誰かに感謝したり、誰かを陰ながら応援している。震災後支援いただいた名取に感謝し、「笑い文字」を通して笑顔いっぱいにしたいと話す玲子さん。
メディア紹介やコロナ禍でのオンライン講座によって、「笑い文字」を書いてみたいという全国各地の人とつながり、心和む輪がゆっくりと拡がっている。
 自由に往来が出来なくなったことを嘆くより、ネット活用の多様化で新たな手段でつながる喜びも実感する現在。手紙やハガキには古来変わらぬ人の温もりや気遣いがある。「笑顔」になれない、「ありがとう」と素直に言えない毎日かもしれない。双方に喜びや元気を与える、唯一無二の魔法のコミュニケーションであることを、玲子さんが全国の仲間と書いて伝える「笑い文字」が物語っている。

一般社団法人笑い文字普及協会
初級講師 只野玲子さん

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