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三浦隆弘 ひとも野菜も根っこが大事

【なとり農と自然のがっこう/農業】

 一月の大寒、下余田の三浦さんを訪ねた。奥羽山脈の神室山水系の名取川流域、湿地帯でのせり作りの歴史は遥か昔にまでさかのぼるという。下流域には閖上地区。貴重な水資源を活かすにあたって、地域を潤す水の大動脈や環境に負荷をかけないものづくりのひとこまに出会う。
 言うまでもなく、ここで生産されるのは「仙台せり」という名の「名取せり」である。1700年代後半、安永の時代に端を発するせり栽培が、今も脈々と続けられている正真正銘の在来野菜。自家採種から始まり、芽出し、水田の整備や準備、水田への定植、水管理から収穫、出荷に至るまで、年間を通して家族での手作業に追われる。

名取のせりが近年の盛り上がりに至るまで、生産者としての試行錯誤があったことが伺える。農家に生まれ、早々に家業を支え始めてから20年。決まったルートで出荷するという従来のやり方から、独自ルートを開拓し、圃場と地域、環境全体まで考えて取り組もうと熱のある生産者がいつしかつながり、情報交換が盛んに繰り広げられてきた意識変化の中で、三浦さんの模索や実践が毎年続けられてきた。時に疑問を持ち、考え、時に失敗も転換させて成長してきた経緯が、名取のせりを現況の知名度まで押し上げたと言っても過言ではないだろう。

 せり田の傍らで、三浦さんは毎年増田小学校の児童たちと「紫黒米」を栽培している。就労や住環境の変化で農業を間近で体感する子どもたちが激減する現代、食を知る農業体験ほど価値あるものはない。田植えから収穫まで、喜びと試行錯誤で泥だらけになりながら取り組む子どもたちの様子が目に浮かぶ。

 多様な生物が生息する圃場で、循環型の有機農法でせりを生産しながら、風土も経済活動も巻き込む地産地消の重要性を追いかける日々。農林漁業、飲食店、関わる多くの関係者の垣根を越えて、宮城ならではのローカルガストロノミー向上を探る。時にメインとなり、脇役となり、双方の個性や味を認め合う意味では、せりも人間も同じである。。柔らかで清々しい香り、噛むことに喜びすら感じる根、茎、葉それぞれの食感と食べ応え。根っこから葉先まで、丸ごと旨い地物の醍醐味を教えていただいた。

なとり農と自然のがっこう農業・せり生産者
三浦隆弘さん
名取市下余田字飯塚410-3 TEL.022-382-4606
なとらじ801 ゆうやけな・と・り!(月~木)火曜日出演中!

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